Dr.矢澤

 
/7/10
no191掲載
 いまや中高年に欠かせない健康成分として、厚労省も1日1gの摂取を推奨する青魚に含まれるDHA,EPAのオメガ3脂肪酸(スリーオイル)。最近では、青魚以外のオメガ3供給源としてオキアミ(クリル)オイルが注目され、私どもにも次世代型DHA,EPAの供給源として多数の問い合わせが寄せられています。
 クリルオイルは天然の油脂素材で、オメガ3脂肪酸、リン脂質、アスタキサンチンを含有。特に魚油のオメガ3脂肪酸に比べて人体への吸収性の高いことがわかっています。脳機能、関節(炎症を抑える)、肝機能、抗メタボなどさまざまな生理機能が報告され、世界各国でサプリメントとして普及。米国では、わずか数年で500〜600億円の市場に成長。
 では、クリルオイルの健康効果とは? まず挙げられるのは、魚油のオメガ3系脂肪酸に比べ、クリルオイルはリン脂質結合型オメガ3であること。リン脂質は乳化剤として体内への吸収を促し、水にも溶ける性質があり、DHA,EPAを効率よく体内に吸収。脳、肝臓、腎臓、副腎、目などの組織へも効率的に吸収されるので少量でパワーを発揮できるのです。
 またオキアミのルビー色は、カロテノイドの一種のアスタキサンチンという成分。体の老化を促す活性酸素を消去する働き(抗酸化作用)があり、アンチエイジングや疲労回復、眼精疲労に有効だけでなくDHA,EPAの酸化も防ぎます。
 オキアミは地球最大の生物クジラの主食でもあり、クリルオイルの健康効果は注目を集めているのです。
 

/6/10
no190掲載
 いわゆる「健康食品」に機能性の表示が許される制度(機能性表示食品)が今年の4月1日から制度化されました。健康長寿が経済をけん引していくということで、安倍内閣の規制緩和の1つです。
この制度は、健康食品を国民にわかりやすく活用してもらい平均寿命より健康寿命をのばすことで国民の健康増進、併せて産業の振興をもたらし、結果として国の医療費を抑制しようという3つのメリットを狙ったものです。
では、これまで機能性表示が許可されていたトクホ(特定保健用食品)とどこが違うのでしょうか。トクホは国に申請し、審査を受け許可されるのに対し、機能性表示食品は企業がガイドラインに従って健康効果を実証すれば企業の責任において体の部位ごとに効能を表示できるのです。
現在、消費者庁に約200件の申請があり、このうち26件が登録されています。販売まで60日の経過期間が必要なので、機能性表示食品の最初の販売は6月中旬頃となります。しかし、書類審査は順次行っており、これから続々登場となりましょう。
もう一つ、トクホにない特徴は、機能性農作物(品種改良を重ね、普通の農作物より栄養を凝縮させた物)も販売が可能な制度ということです。例えば、骨粗しょう症リスクを軽減させる温州ミカン、花粉症に良い緑茶、総コレステロールを低下させるソバなどです。
ただし、最終製品を用いたヒト試験による実証、その製品の十分な科学的データや機能性成分の安全性に関する情報公開など、国民を守るために健康効果の根拠を明確にするためのルールは厳格です。
病気の治療や予防効果を暗示するなど、消費者に間違った認識を与える表示や広告、販売方法に対する取締まりは厳しい。いずれにせよ平成20年より実施されている特定健診・特定保健指導で脱メタボ指導を受けなかった人は医療費が34%も余計にかかっているというデータもあるように、機能性表示制度は、予防医学へとカジをきった国の施策の一環なのです。
 

/5/10
no189掲載
  体力と記憶力の衰えを痛感し、70歳を機に毎日リハビリに通って老化と闘うことを決意した人がいますが、近頃は、医療現場でも予防医学の重要性を見直す機運が高まっています。
 予防医学には、病気の原因となる危険因子を身の回りから遠ざける「除去予防」と病気の発生を抑える物質を継続的に摂る「化学予防」があります。
 前者は、好ましくない生活習慣や喫煙などを改善し、取り除こうというもの。後者は、栄養補助食品の利用をすすめることです。
 化学予防に積極的に取り組んでいる欧米で、認知症の治療に汎用されているのがイチョウ葉エキスです。
 イチョウは、3億年もの間子孫を残し続け、その一生は数百年にも及ぶ長寿の樹です。
 イチョウ葉エキスは、ドイツの製薬会社が実験用のネズミにイチョウ葉エキスを授与したところ、全身の血行がみるみる高まることを発見したのがきっかけでした。以後、ドイツは1965年に、フランスでは1974年にイチョウ葉エキスが医薬品とされ血管障害や認知症の治療に使われています。
 イチョウ葉エキスの効能は、主にイチョウの青葉に含まれるフラボノイドとテルペン類(ギンコライド)の相乗効果によって生み出されます。
 これまで明らかになっているのは@脳の血行促進、A毛細血管を広げ血栓を防ぐ、B血流を高め脳細胞を賦活する、C活性酸素の害から脳細胞を守る、D脳の情報伝達機能を高める、など脳梗塞や心筋梗塞の予防と回復に有効に働きます。
 ただし、イチョウの葉やギンナンにはこうした効用は期待できません。
 

/4/10
no188掲載
  103歳の聖路加国際メディカルセンター理事長の日野原重明さんが、大豆レシチン小さじ4杯を牛乳200ccに溶かして飲むことを朝食「ブランチ」の定番メニューの一つにしていることを知りました。(朝日新聞「103歳・私の証 あるがまゝ行く」)
 大豆レシチンは大豆に含まれるリン脂質のフォスファチジルセリンという栄養素です。
 前号でブレインフード(脳機能改善食品)としてとりあげたフォスファチジルセリン(以下PS)も大豆のリン脂質に含まれる栄養素です。脳の神経細胞の膜のリン脂質の10%前後をも占めていることからも、脳の機能に必要不可欠な物質であることがわかります。その健脳効果を探る研究は欧米では50年前から行われております。例えば、アメリカのクロック博士らは加齢によって記憶力が低下している50〜75歳の149人を2つのグループに分けて、一方にだけPSを毎日300mg、12週間投与し記憶力の変化を調べました。その結果、3週目で記憶力や認識力が好転し、最終的に12歳も若返ったと報告しています。また、イタリアのパルミエリらは中等度の認知症の患者さん87名に、セナッチらは425名に、アマデュッチらは115名を対象に、PSの投与で認識力や記憶力、集中力が改善され、早期の段階なら症状の発現を防止できると報告しています。こうしたPSの健脳効果は、PS100mgを得るには大豆3.5kgを食べなければなりません。それは到底無理。ということで、栄養補助食品の利用をおすすめします。

/3/10
no187掲載
  春3月は卒業、退職、転勤など、何かとストレスに満ちた季節。
 私たちの体は、ストレスがかかると脳の視床下部−脳下垂体−副腎といった3つの組織の連携プレーで数種のストレスホルモンを分泌し、ストレスに抵抗する仕組みになっています。
 こうしたストレスの関与をまず受けるのが脳の神経細胞で、ストレスが相次ぐと、脳の神経細胞はどんどん破壊されるのです。認知症も脳の神経細胞が一度に多量に死滅し、知能障害が引き起こされたものですが、脳があやうい状況にあるのは高齢者だけではありません。「中高年の自殺」、「うつ病」、「キレル若者」、「ADHD(注意欠陥多動性障害)」といった症状や行動も同様の知能障害から誘発されたものと考えられています。
 こうした脳の機能障害に対するブレインフード(脳機能改善食品)として注目されているのがフォスファチジルセリン(PS)という脳の神経細胞の膜を構成しているリン脂質で、記憶力や認知力の保持、ストレスに負けない精神力や注意力など神経細胞の活性に大きな影響力を持つ細胞膜成分です。
 PSはこのように細胞の生命活動を支えていることが明らかになってきたのですが、残念ながら体内では創り出せず、食事から補給する必要があるのです。詳しくは次号で。

/2/106
no186掲載
  「漁師たちが釣道具をしまっておく小屋に鮫の肝油を貯蔵しておくドラム罐があったが、老人はそこから毎日コップ1杯ずつ汲んで飲んだ。・・・おかげでどんな風邪にも流感にもやられない。なにより眼にいい」、これはヘミングウェイの小説「老人と海」の一文で、老漁夫の元気の源は鮫の肝油。水深約1千メートルの海は酸素濃度が極めて薄く過酷な環境。なのに鮫は元気に泳ぎ廻り、平均寿命は約70年。百歳を超えるものもいるという。この鮫の強靭な生命力は体重の約1/4に及ぶ肝臓に多量に含まれる肝油で、その50%以上を占めているのがスクワレン。いわば酸素ボンベの働きをしている。
 スクワレンは人の体内でも合成されていて、コレステロールやホルモン、胆汁酸の前駆物質。肝臓、皮ふ、心筋、骨格筋、動脈壁、リンパ腺、腎臓、膵臓、脂肪組織など全身に広く存在。体を元気にする原動力となっている。
 このスクワレンの食効その1は、酸欠を防ぐ。全身に酸素を運ぶ赤血球の柔軟性を保ち、血液をサラサラにする。血管の老化の動脈硬化も防ぐ。その2は、老化や病気の9割が関係するといわれる活性酸素を消し去る働き。その3は、強力な発がん剤を溶かした水槽で鮫を8年間飼育した米国の研究では、1個のがんも発生しなかったほど体の免疫力を高めるという結果も出ている。

   

 


29 アンチエイジンクにクリルオイル
topics 健康志向と食品の機能性表示のねらいは
27 脳機能活性化にイチヨウ葉エキス
26 脳を元気にするフォスファチジルセリン
25 知っていますか?ブレインフード
24 “万病に効く”といわれてきた……、スクワレン

  2014年以前に掲載
23 インフルエンザ予防にDHAが効く
22 “飽食”の危険を救う(?)キクイモ
21 魚食による健脳で認知症を予防!
20 肥満はメタポの元凶
19 健康的な生活習慣でがんを予防する
18 へルスフードで“ピンピンコロり”を
17 スーパーフル−ツ、アサイーに注目!
16 ストしスに健脳サプリのギヤパを
15 ノコギリヤシの前立腺肥大抑制効果
14 生活習慣病予防に期待!黒酢の健康パワー
13 今、なぜ人気? 黒酢
12 コラーゲンの肌健康効果
11 免疫乳酸菌で、腸を元気に
10 今、なぜ乳酸菌健康法?
9 睡眠障害改善の薬用ハープ
8 関節や骨代謝改善、QOLアップのへルスフードグルコサミン
7 「日本を健康にする!」研究会を知っていますか?
6 抗疲労物質、アスタキサンチン
5 「機能性おやつ」の時代がやってくる!
4 次世代型EPA/DHAはクリルオイルで摂る!
3 内臓脂肪はなぜ悪い?
2 ドライアイとEPA
1 DHAを知っていますか?

 
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