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西日本新聞に 連載された「家庭株式会社論」
PART2
西日本新聞に 連載された「家庭株式会社論」
役割分担を決めて、経営する
家庭を株式会社として考える、といっても、そんなにむずかしいことではありません。
企業も家庭も、規模の大きさこそ違っても、経営の基本はまったく同じなのです。ちょっと、一般の株式会社の組織を思い浮かべてみてください。
まず、製造部門。ここでは、製造品を作ったり、新製品を研究・開発したり、設備投資について企画を立案したりします。次に営業部門。製品を売ったり、市場を開拓するのが役目です。そして管理部門。製品を売った代金を管理し、生産費をコントロールする経理、資産を効率的に運用する財務、従業員を把握する人事、働きやすい環境や慰労を考える福利厚生などが含まれます。
いかがですか?
あなたの家庭に、この3つの部門を当てはめ考えてみれば、よくわかることです。一般のサラリーマン家庭では、夫が製造と営業部門を担当して毎日一定の売上げ、すなわち給料を得ていることになりますし、妻が管理部門を担当していることになるのではないでしょうか。
そのポイントは、給料をいかに効率よく家庭経営に活かせるかです。たとえば、住居費、食費、光熱費などは生産に欠かせない費用ですし、夫の背広代や小遣いは営業費、子供の教育費などは将来への投資、レジャー費は福利厚生費、本や新聞代は研究開発費……というように考えればわかりやすいでしょう。
ところで「家庭株式会社」は、企業の規模でいえばギリギリの小規模です。ですから、倒産しないように管理し、将来に向けて大きく発展させていくためには、実は大変な努力が必要なのです。製造、営業部門とがまったく違う方向を見ていたり、勝手な要求をしていたのでは、たちまち放漫経営から倒産という憂き目に遭ってしまいます。
よく、「男はしっかり働いて、稼いでさえいればいいんだ。家計のことに口を出すなんて、コケンにかかわる。そんなことは女房にまかせておけばいい」という夫がいます。住居とか自動車といった大きな買い物をする時だけ相談を受ければいいとか、家計簿に目を通したり、小さな買い物の値段をチェックしたりするのは、スケールの小さい男性のすること、細かいことにはコセコセしないのが男の貫祿というわけです。そして、最大の関心事は、妻に渡した給料やボーナスの中から、いかにして小遣いをたくさん獲得するかということ。
これは、一見、大変かっこうのいいように思えますが、本当にそうなのでしょうか?
家計のヤリクリは妻の責任、黙っていても万事うまくやってくれるのがいい女房なんだという逃げの姿勢が、そこに感じられます。山内一豊の妻を期待しているわけです。
妻の方もまた、家計の実権はしっかり握っていたい、夫に口出しされたくないという気持ちもあったと思います。少々赤字は、なんとかボーナスで穴埋めしておけばと。子どもは子どもで、あれも欲しい、これも欲しい、どうやって母親からお金を引き出すかに知恵をしぼっている状態。企業でいえば社員に当たる家族の一人一人が、そんなことばかり考えていたとしたら、正しい予算(お金)の使い方などできるわけがありません。
高度経済成長期のように、年々収入が増えていき、ボーナスもかなりの額を当てにできた時代なら、そんなやり方でも通用したのですが、日本も今では長引く不況、失業率の増大、加えてデフレ時代で大幅な収入増は望めなくなっています。
つまり、「家庭株式会社」の考え方を生かして、家族全員で家計について話し合い、真剣に家計管理に取り組むことが大切な時代に入ったのです。
それでは、家庭株式会社の運営方法について、具体的にはどのようにすればよいのか。
まず社長役。これは、夫と妻が交替でつとめます。家族の中で社長を決めるなんて、馬鹿馬鹿しいと思うかも知れませんが、それならば総責任者という呼び名でもいいのです。
ともかく、誰か一人、大局的な“かじとり役”を決めることから始めます。
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