Q&A3 ポートフォーリオ 効果的資金分散のすすめ

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 北海道札幌市在住の山村道夫きん(自営業・58歳)。かつてバブルの時代に株やゴルフ会見権、ワンルームマンション投資などに手を出し、ことごとく大失敗した苦い経験から、最近は資産運用に及び腰。しかし、現在の預貯金金利に満足できるはずもなく、できれば何とかしたいと思っている。何かよい考え方はないものか……。アドバイスが欲しい。


【ドクターの診断】  バブル時代の資産インフレ下では、多くの人が万一のことが起こったときのリスク回避に目を向けず、ただただ同じリスク要因で同じように価格が上がったり、下がったりする資産に資金を分散。これを、言葉の上ではポートフォリオ(運用資産の組み合わせ)と呼んでいました。
 例えば、ワンルームマンション投資がいいからと、大小とりまぜ、様々な地域のマンション数件に投資をし、これを分散投資と称していたわけです。確かに分散投資に違いはありませんが、これでは地価の下落という同じリスク要因にすべての資金が晒されてしまうだけ。程度の差はあれ、結果的には価格がすべて目減りし、場合によっては借金だけが残ってしまうこととなったのです。


 これは、国内株式にしても同様。銘柄やセクターを分けて分散を図ることは確かに重要ですが、それだけでは日本株の下落というリスクから逃げることはできません。もちろん日本株を運相対象とする株式投資信託にしてもことは同じ。資金分散を図るのなら、異なるリスク要因を持つ各種の資産に、手持ちの資金を分けて投資することが必要です。 これからは国際分散投資が必須  1991年前後だったでしょうか、日本株が右肩上がりの歴史に終止符を打ったのではとの観測が少しずつ広がり始めた時期、ある証券会社が懸命に外国投信の販売に取り組んでいたのを思い出します。いまでこそ、多くの投資家が目を向けるようになった外国投信ですが、当時はまだまだ知名度の低い存在。米国のフィデリティやアライアンスなとが運用する米国株ファンドの買い付けを取り次いでは、少しずつ顧客に海外資産投資の有効性をアピールして行きました。


 結果、為替水準がその後大きく円高に触れたものの、米国の株価水準が当時の約3倍に値上がりしたことで、多くの顧客が日本株安の被害を一部免れたうえ、この2年ほどの円安傾向も手伝って、なかにはかなりの利益を出した向きもあります。  その証券会社は、いまでも海外もののファンドの取り扱い実績には定評があり、海外の運用会社からもそのマーケティング能力を高く買われた結果、より内容の充実した商品の品揃えを武器にしています。  要は、投資信託一つ例にとっても、これからは国際分散投資が必須。また、状況によっては、株式型と債券型のファンドにそれぞれ資金を分散させることも有効でしょう。


 もちろん、個々の家庭の投資戦略は家族の事情や各人の年齢などによっても変わってきます。山村さんの場合は、たとえ自営業で定年がないとはいえ、そろそろ「安全重視型」の運用ポートフォリオを実践する年頃。60歳を一つの節目と考え、年齢や目的にあわせた運用資産の組み合わせをじっくり検討してみるといいでしょう。  ここに挙げたのは一つの例です(グラフ参照)。豊かな老後のための生活資金づくりを目的とするこれからの運用は、いまある資金を大幅に減らすようなリスクに晒さず、じっくり成長させて行くようなスタンスが望まれます。かといって、預貯金オンリーでは物価上昇やインフレといった大きなリスクに見舞われることも考えられますから、そこは少々リスク資産への投資も考慮したいものです。


 日常性の資金は、普通預金や定期預金よりも多少なり高いリターンが期待できるMMFなどに貯め置きます。これに決済性を持たせたい場合には、一部の証券会社で扱っているMRF(マネー・リザーブ・ファンド)を核とした「証券総合口座」を利用するのも一手です。さらに、最低でも向こう半年から1年ほど余裕のある資金は、公社債型のファンドヘ。いわゆる短期決済型公社債投信と呼ばれるもののなかから、過去に比較的高い実績を安定的に出している運用機関(投信会社)のものを選んで利用します。ここまでは、ほぼ元本割れの可能性がないに等しい安全重視の運用スタンス。  加えて、少々長めの資金は話題の「外貨建て外国債券ファンド」や元本確保部分の割合が高い「商品ファンド」、または信託銀行の実績配当型金銭信託などで、5〜7年をメドに運用してはいかがでしょう。近頃は、実績配当型金銭信託のなかに「元本確保型」が登場していますし、商品ファンドはかつてより大分小口化が図られ、利用しやすくなっています。なお、外貨建ての資産をここに組み入れることは、将来、円安傾向が強まった場合の為替リスクを一部回避するのに有効です。
 そして、全体の一部に株式型のファンドを組み入れておくことも、インフレリスクの回避には大きな効力を発揮します。

株式型のファンドは、できれば日本株型と世界株型、あるいは北米撃と欧州型など、投資対象地ごとに分散して利用するのがベターです。 羹に懲りて膾を吹いていては……
 ところで、こうした理想のポートフォリオを構築するためには、より有能なパートナーを選別することも重要です。過去のファンドの運用実績に比較的高いものが認められる外資系投信会社のファンドを数多く品揃えしている証券会社で、より詳細なデータを入手することがまずは何より。もちろん、この12月以降は銀行など多くの金融機関の窓口で投資信託の販売が行われるようになりますから、その動向をしっかり見つめておくことも必要でしょう。
 しっかりとした運用体制を敷いて、キメ細かく全体の管理を継続すれば、今の時代に年率5%、7%程度の運用実績はまったく夢ではありません。もちろん、元本割れの恐れを感じることもなく、より安全重視で運用した場合でも。
 バブル崩壊の「羹(あつもの)」に懲りて、いつまでも「膾(なます)」を吹いているようでは、豊かな老後も幻となってしまいかねません。