Q&A1  手持ちの資産を有効活用しよう!

中高年のための生命保険見直し術


【Q】
 千葉県船橋市在住の山本武夫さん(会社員/56歳)。60歳の定年退職を数年後に控えており、老後のマネープランに思いを巡らせることも多くなった。退職金は2,500万円程度支給される予定だが、うち500万円は住宅ローンの返済に充てなければならず、残る2,000万円と厚生年金が老後の生活原資の全て。他に手持ちの資産といっても、死亡時に1,000万円の保険金が遺族に支払われる「終身保険」ぐらいしか見当たらず、少々不安である。この先、病気やケガなどで入院を余儀なくされたときのことも考え医療保険にも入っておきたいが、果たしてどのようなプランが有効か

【ドクターの診断】  
 定年退職後の生活保障を考えるとき、何かと見落としがちなのが生命保険です。それは保険の種類にもよりますが、ことに「終身保険」または「定期付き終身保険」の終身部分については、立派な資産でありながら見過ごしがちなもの。養老保険など貯蓄性の高い保険も含めて、ここでわが家の保障プランの一切を再確認しておかれることが大切です。
 さて、山本さんが加入しておられる終身保険1,000万円は、放っておけば一生涯、亡くなるまで死亡保障として機能しますが、その保障は果たして絶対に必要なものでしょうか。死亡保障の最大の役目は、被保険者の死亡後に本来得られるはずであった勤労収入の喪失を補完することにあります。

ということは、逆に勤労収入のない方に死亡保障は必要ないということでもあります。つまり、定年退職後の死亡保障は極端に言えば不要。もちろん「葬式代やお墓にかかる費用は保険から捻出したい」というのであれば、その分だけ保障は必要かも知れません。しかし、それ以外に妻や子供たちに高額の保険金が支給される意味が果たしてあるでしょうか。
 定年退職後の夫に万一のことがあった場合には、それ以降、妻に遺族年金が支払われます。その額は生前夫が受給していた厚生年金支給額の4分の3。本来なら、これで十分にやって行けるはずです。確かに、遺族の方に保険金が支給されることは悪いことではありません。もちろん、お金はいくらあっても困らないものです。しかし、それでは「定年後に勤労収入がなくなった夫は亡くなってくれた方が家族のため」という本末転倒な話にもなりかねません。

終身保険から“生存保障”へ変換

 少々屁理屈が過ぎたかも知れませんが、要は手元の終身保険という貴重な資産をそのまま放っておくよりも、老後を豊かに生きるために有効活用されたらどうかということ。つまり、いまある死亡保障を解約して現金化するか、または年金化することにより、今後は「生存保障」(より豊かに暮らすための生活原資)に換えて行くのです。
 山本さんの保険契約について契約時年齢などの詳細なデータはありませんが、仮に図のような契約であれば、六十歳時に解約することによって600万円余りの解約返戻金が手に入ります(都合上、現在の予定利率を元に算出)。また、それを一括支払の保険料と見做して「個人年金」プランを構築することもできます。年金にする場合は、終身年金にするか、それとも確定・有期年金にするかも重要なポイント。そのことについては、これからじっくりと時間をかけて検討して行けばいいでしょう。
 とにかく、山本さんは退職金と公的年金以外にも「終身保険」という老後の生活資金の原資を持っているのです。そのことをあらためて認識しながら、今後、より詳細なマネープランを計画して行くことが大切です。

 さらに、仮に終身保険を解約して600万円余りを現金で受け取る場合には、退職金の2,000万円と併せて、できる限り有効な運用を行うことが望まれます。まだ少し先の話ではありますが、いまのうちから、そうした資金の運用ノウハウを研究しておかれることも必要です。最初は小さめの金額から、少しずつリスク商品などにも手を出してみて、その後の状況をじっくりと体感されてみてはいかがでしょう。
 そうすることによって、資金分散の必要性やその程度、各種商品のリスク度合いなどが実感でき、将来の本格運用のよき参考になるはずです。最近は、退職金をそっくり全額、毎月分配方の外貨建て外債ファンドに投資して、月々かなりの分配金を年金代わりに受け取っている、などという猛者もおられます。そういったことに挑戦できるのも、ある程度の経験と知識を持ち合わせていればこそでしょう。定年までの間に、いろいろと研究努力してごらんになることをお勧めします。

  医療保険や特約で安心を買えるか

 また、医療保障については、それを現預金で備えるか、医療保険で備えるかの選択になってきます。一般には、多くの方が「安心」を買う意味で、医療保険に加入されたり、既加入の保険に医療保障特約を付加されたりしていますが、それが本当に合理的な選択とは言い切れないのでは……。
 確かに、病気やケガなどによる入院時に給付金が日額5,000円支給されるとか、手術給付金が10万円支給されるなどというのは有難いことではあります。しかし、そのために毎月毎月(または一括で)かなりの保険料を支払って行かねばならないのも事実です。

その保険料相当額を保険会社に支払うのではなく現預金で持っておき、実際に病気などで必要になったときにその都度支払って行くというのも、考えようによっては一手です。それでも、とにかく何が何でも安心が買いたいというのであれば、せいぜい「入院給付金日額5,000円」程度の医療保険を全労済の「綜合医療共済」など、掛金が割安なところで備えておかれればいいでしょう。