Q&A4  一変する!?外貨運用のスタンス  

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 栃木県足利市在住の山下清さん(五十歳・会社経営)。近頃、雑誌などをめくつているとよく新しい欧州通貨「ユーロ」に関わる記事を目にすることが多くなった。既に、欧州市場に投資する投資信託や欧州通貨建ての預金や債権を利用する人が増えているという話だが、その魅力と可能性はいかに? 具体的な商品なども勉強してみたいのだが。  


【ドクターの診断】  今年七月、準大手の国際証券が募集した追加型株式投資信託「ユーロ・ソプリン・オープン」は、一カ月にも満たない当初募集期間中に五百億円近くもの資金を集めて話題になりました。  これは、EU(欧州連合)加盟国のソプリン債券(各国政府およぴ政府機関や国際機関が発行する債券の総称)に投資することにより、長期的に安心した収益の確保と信託財産の成長を目指すファンドで、欧州では有力なパリパ・グループ傘下のパリバ投資顧問のアドバイスを受けて、国際投信投資顧問が設定・運用します。


 その少し前にも、国際証券はECU(エキュー)建ての「ソロモン・ユーロ・ボンド・ファンド」という投資信託を売り出し、ほんの二カ月ほどの間に前出の「ユーロ・ソプリン・オープン」と合わせて一千億円以上の資金を集めました。


 それだけ、いま日本国内ではECU、つまり明日の「ユーロ」に期待する向きが増えているとい、ことで、多くの大手外銀や国際的な調査機関も「今後は相当な勢いでドルからユーロへの資金シフトが起こる」と予想し始めています。こうした予測を追い風に、国内の金融横閑がECU建ての外貨預金やECU建ての外貨MMF、ECU建ての外国債券などをこぞって品揃えしており、実際に申込者は後を絶たないといった状況です。  ご承知の通り、いよいよ来年一月から欧州通貨統合がスタートします。


 既に概念上の共通通貨として存在しているECU(EU十五カ国の通貨をウエート付けした標準値で、紙幣や貨幣は存在しない)は、来年一月からすへて「ユーロ」と等価交換されることになっているため、いまのうちからECU建ての金融商品を手に入れておこうという向きが近頃目立っているのです。 ユー口はドルと並ぶ世界の基軸通貨 ユーロが誕生することにより、欧州は米国とほぽ同等で、日本の約二倍という一つの大きな経済圏(GDPは約六兆ドル、人口は約三億人)になります。これだけ巨大な経済圏で通用することになる通貨=ユーロは、欧州域内における商取引や資本取引上の為替リスクをなくすだけでなく、世界にドルと並ぶもう一つの基軸通貨が誕生する可能性を示唆しています。


 そうなると、他国通貨に対するユーロという通貨自体の価値が高まるとともに、何より欧州諸国がかつてない経済発展を遂げる可能性も予想されます。既に、欧州諸国の企業の株価は徐々に値上がり始めており、中南米の経済危機という「アキレス腱」を抱える米国の経済や株価そしてドルへの信任が揺らいでいる今、これまでドルへ向かっていた世界のマネーが明日のユーロへと向かう可能性も高まっています。そこで、いまのうちにECU建ての資産や欧州市場に投資する商品に資金を移しておこうという投資家の動きが活発化しているわけです。

多様になるユーロ投資の選択肢

 私たちが具体的にユーロ建ての資産を持つ方法としては、まず第一に外貨預金があります。もともと東京三菱銀行やシティバンクなどではECU建ての外貨預金を扱っていますし、今後は新たに取り扱いを始める銀行が急増することでしょう。ただ、ECUというのは金利がそう高い通貨ではないため、ECU建ての外貨預金はあくまで為替差益狙い。通貨そのものの価値が円よりも高まることに期待して利用する姿勢が求められます。


 また、日興や大和、国際、勧角などの証券会社では、かねてよりECU建ての外国債券を取り扱っています。主にイギリスやフランス、イタリアなどの国債が中心で、利率は年四・五%前後。  利用の際には、一般に最低購入単位が五千ECU(約八十万円)以上となっていることと、証券会社によって為替手数料が大きく異なる点などに注意する必要があります。

 より小口で換金性が高く、為替手数料も比較的安いのは、やはり外貨建てMMFの一種である「ユーロMMF」。
 例えば、日興証券のユーロMMFは、十ECU以上〇・〇一ECU単位で利用でき、為替手数料は、ECUあたり往復二・四円、過去の運用実績は年率三・二%程度となっています。  もちろん、真に欧州経済の発展に期待しながら、実際に高成長を遂げた場合の高収益につなげたければ、やはり欧州株式に投資する株式投資信託を狙う必要があります。  国内では円建てで販売しているものも多くありますが、ファンドにより為替のリスクを回避するものとそうでないものがあることには注意が必要です。また、株式投信ですから運用機関の運用手腕によって、その運用結果は大きく分かれます。さらに、前評判の高い通貨統合とはいえ、ユーロ導入に伴う不透明要素や弊害がないわけではありません。おのずハイリスク・ハイリターンな投資になることは覚悟しておく必要があるでしょう。


 ただ、どのみちこれからは手持ちの資産を円とドルだけで持っていると言うのでは不完全。ドルとユーロは基本的に異なる動きを示しますから、互いをバランスして保有することにより、多くのリスクに備えることができるはずです。
 何より避けたいのは、円の価値だけがズルズルと低下し、円だけで資産形成を行っていた場合に保有資産の実質価値がどんどん目減りしてしまうというリスクです。今後は、少しずつでも外貨に目を向けるようにするとともに、さらにはドルとユーロに通貨分散して行く姿勢を持つことも必要になってくるのではないでしょうか。