Q&A2 信用金庫を見なおそう
Q 北海道札幌市に在住の杉山重喜さん(自営業・49歳)は、わが家のメーンパンクをどの銀行に定めようかと頭を痛めている。折からの金融不安で、たとえ大手行といえども安泰でないことは分かった。とりあえず、経営不安があまりない銀行と付き合うのが何よりではあるが、果たしてそれで取引上のメリットに期待できるかどうかは疑問だ。この際だから、より多角的
に金融機関を検証したいとは思っているのだが……。
A 折からの金融不安で、とにかく比較的経営が健全な金融機関を選んでおこうという傾向が一層強まっていることは確かです。
例えば、かねてから不良債権が少なく健全であると評されていた東京三菱銀行に、昨秋あたりから個人のお金が集中。昨年一年間で個人の預金は三兆円もの増加となり、年末には預金通帳の印刷が間に合わなくなるという″珍事″まで巻き起こったと言われます。
一方で、邦銀よりも外銀の方が有利かつ健全との判断からか、米シティバンクの在日支店に利用者が押しかけ、口座番号が足りなくなるなどという事件もありました。
こうした動きを見ていると、どうしても昔から日本人が得意とする″寄らば大樹……″という言葉を頭に思い浮かべてしまうのですが、果たしてそれで本当にいいものでしょうか。
東京三菱銀行は、確かにその資産量が世界で三本の指に入るほどの立派な銀行ではあります。しかし、必ずしも「個人や自営業者に優しい銀行」とは言い切れないのも事実なのではないでしょうか。私たちのような″一介の庶民″が付き合うに足る銀行かどうか、いま一度、検討してみることは必要です。
シティバンクをはじめとする外国銀行にしても、確かに魅力的なサービス・商品は数ありますが、小口預金者をも含めた全ての利用者にとって必ずしもメリットがあるとは限りません。むしろ、外国銀行の場合は、大口の利用者に対して相応の手厚いサービスを施すことが、ある意味で「平等」という考え方が根本にあります。
「体のサイズ」に合った金融機関
ですから、私たちは今後、各自の″体のサイズ″に合った金融機関かどうかを見極めながら選択を行うことが大事なのです。そうした観点から、身近な金融機関を見渡して見ると……。個人や小規模事業主に優しい金融横間は、意外にも近くにあることがわかるでしょう。ズパリ! それは信用金庫です。もちろん、多くのサラリーマンの方にとっては労働金庫というのも非常に力強い味方です。
もともと信用金庫というのは、一定地域内の住民や中小企業を会員とし、地元で集めた資金を地元の発展のために運用するのが基本姿勢です。融資は会員向けが基本ですが、七百万円以下なら会員以外でも利用できます。
そもそも信用金庫の融資対象には制限があって、資本金が九億円以上、従業員数が三百人以上の企業には貸出ができません。さらに一企業に対する融資限度度は、十五億円か自己資本の二〇%のいずれか低い方。つまり、大銀行による企業向けの大口融資が大量に不良化しているいまのご時勢でも、信用金庫の貸出は比較的健全であると言えます。要するにもとからリスクの高い経営は行えないようになっているのです。
経営の健全度を計る自己賓本比率においても、信用金庫の平均値は総じて高く、なかには一〇%を超える由己資本比率を誇るところもあります。また、個々の単位信金は親組織である全国信用金庫連合会、全国信用金庫協会の統制下に置かれており、言わば″ニッポンしんきんパンク″の地域実働部隊という顔も持っています。過去の歴史を紐解いてみても、一部の都銀をはじめとする他の業態における経営破綻はありましたが、信用金庫の経営破綻のケースは聞き覚えがありません(一部の例外的ケースを除く)。
そのせいもあり、全国の信用金庫の預金残高は昨年末、ついに百兆円を突破。一部の都市銀行や第二地方銀行、信用組合などが預金量を減少させているのに較べて、むしろ信用金庫はより一層の支持を利用者から得ていることがわかります。
個人の「生活口座」としての信用金庫の魅力は多岐に渡ります。教育ローンやマイカーローンの金利が比較的低いことは、既にご存じの通り。また、近年の地価の下落で「担保割れ」の状態になっている住宅ローンの借り換えにも比較的柔軟に対応してくれます。そして何より、信用金庫の最大の持味でもある定期積金などの集金業務、地元住民との強いネットワーク、いわゆる「顔」の見える金融機関としての存在は、個人の利用者にとって他では得がたいものです。
前向きな信用金庫を見極めよう
一方、自営業者や中小企業にとっても信用金庫は頼りになる存在。ことに、大手金融機関による″貸し渋り″に頭を痛める事業主にとって信用金庫は頼みの綱でもあります。もちろん、キメの細かい情報サービス、それもその地域ならではの情報の提供が、企業経営に活かされる場面は数あるでしょう。昨秋に起こった一連の金融機関の破綻は、その銀行から融資を受けている一部の企業に大きなダメージとなりました。
貸出債権を含む営業権の一部が破綻銀行から他の銀行に譲渡されるとき、場合によっては、その債権の一部が切り捨てられることも明らかになりました。受け皿となる銀行が債権を引き受けてくれないことがあるわけです。ですから、いまどきは「ウチのメーンは大手の00銀行」などという企業ほど、危ないと見倣されて取引先から現金取引を求められたりもします。その意味で今後は、むしろメーンを信用金庫と定める企業の方が自らの信用度を高めるようなこともあるのではないでしょうか。
進んだ信用金庫は、ビッグバンのなかで新たな業務展開、新商品の取扱などにも積極的です。この六月から最低預入額規制が撤廃となった「商品ファンド」の取扱いをいち早くはじめるところもあれば、今年の十二月には投資信託の本格版売を始めるところもあるでしょう。数ある信用金庫の中でも、より前向きな展開を図っているところを有効活用することこそが、意外にもビッグバンの最終的な結論だったりするのかもしれません。 